日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
三次元有限要素解析による 犬歯誘導咬合の有効性に関する力学的検討
吉野 晃横瀬 敏志
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2019 年 39 巻 3 号 p. 190-197

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抄録

【緒言】犬歯誘導咬合とは,側方運動時の上下歯の接触関係で分類される咬合様式の一つで,側方運動中に作業側では上下顎犬歯のみが接触滑走し臼歯を離開させる様式と定義される.犬歯誘導により下顎の偏心運動による天然臼歯への有害な水平分力を避けることができると考えられ力学的な有効性が唱えられているが,その科学的根拠となる報告は少ない.今回,三次元有限要素解析を用いて犬歯誘導咬合による歯および下顎骨体の力学的挙動を検討したので報告する.【材料および方法】一歯単位の力学現象を解析するための臼歯部側方荷重モデル(解析モデル1)および犬歯誘導の有無による歯および下顎骨体の力学挙動解析モデル(解析モデル2)の二つを実際の患者のCT 画像データから作成し有限要素解析ソフトMECHANICAL FAINDER version9.0(計算力学センター東京)に入力し分析した.【結果】①解析モデル1:変位図から下顎の水平方向の動 きを歯が受け止めていることが解った.垂直荷重と比較し,側方運動時は,歯では歯頸部に大きな応力集中を,歯槽骨部では根分岐部に強い応力集中を認めた.これは,力学現象といわれる歯頸部歯質欠損や根分岐部病変などの臨床症状に一致するものである.②解析モデル2:犬歯誘導有りモデルでは犬歯付近,犬歯誘導無しモデルでは前歯付近の応力が高かった.関節円板から受ける反力の方向を比較すると,下顎頭は犬歯誘導有りのモデルに対し犬歯誘導無しのモデルでは後方からの反力を受けており,後方へ移動しようとしていることがわかった.【顎咬合誌 39(3):190-197,2019

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© 2019 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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