観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
観光メディア論の試み
観光的リアルの構造とその変容
須藤 廣
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 2 巻 1 号 p. 43-54

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抄録

観光はリアリティを創作する一つの手段であり、「メディア」としての機能を持っている。観光(地)を一つのメディアとして見たとき、観光のあり方の歴史的変容がどのように記述できるのか、また現代の観光のあり方は、どのような変容の結果なのかをこの稿では考察した。
マクルーハンのメディア論から、観光は〈ホット〉なものから〈クール〉なものへと向かい、そのことによって観光諸アクターの「参与」が促されることを明らかにした。また、メイロウィッツのメディア論から、観光がシステム化されるにつれ観光文化が持っていた〈表舞台〉と〈舞台裏〉との境界があいまいになり、観光文化は「深さ」を失うことを確認した。これらのことは、人工的になった観光がより人工的に現実を作り出そうと、観光諸アクターのさらなる参与を促すことを意味する。
さらに、こうして導き出された観光メディア論の図式をバーンスティンの教育的知識の変動論に当てはめてみると、観光メディアの変動が、観光における知識やリテラシーの社会的分裂を生じさせる可能性があることが分かる。

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© 2014 観光学術学会
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