観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
観光まちづくり研究に対する権力概念を中心とした社会学的批判
四本 幸夫
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 2 巻 1 号 p. 67-82

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抄録

観光まちづくり研究の成果が近年数多く発表されている。主流の観光まちづくり研究では、地域活性化という国と地方の要請に応えようとして、観光まちづくりの成功例の紹介や、成功の為の実践マニュアル化に研究が集中している。その過程で、地域が所与で静的なものとして描かれ、権力及びその表出としてのコンフリクトに関する考察がほとんどなされてこなかった。しかし、現実には地域は多様であり動態的なものであるし、観光まちづくりにおいて権力は様々な形で現われている。
本稿では、観光社会学や観光人類学などで議論されてきた権力概念をまとめ、それらが観光まちづくり研究に活かされていないことを明らかする。そして、観光まちづくり研究で権力概念の導入が必要と思われる5つの分野(文化情報消費産業としての観光の持つ権力性、地域の観光資源をめぐる権力性、ジェンダーによる権力性、国家権力、地域の権力構造)を提案する。さらに、地域における権力を分析するのに有効な地域権力構造論と批判的権力論を用いてどのように観光まちづくりの理解を深めていくことができるのかを考察する。

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© 2014 観光学術学会
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