観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
揺れ動くホストとゲスト
エコツーリズムと小笠原新島民の生活実践をめぐって
山崎 真之
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 4 巻 2 号 p. 107-119

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抄録

本稿の目的は、東京都小笠原村における新島民と呼ばれる移住者たちの生活実践を事例に、エコツーリズムを通してゲストとホストが転位する社会的背景を明らかにすることである。小笠原は国内でもエコツーリズム先進地域として評価されており、2011年に世界自然遺産に登録された。小笠原のエコツーリズムに中心的に携わっているのは、全島民の大半を占めるに至った新島民であり、彼らの日常的な生活実践の多くはエコツーリズムと結ばれている。先に移住した新島民たちによる観光客への「演出」が見出せ、ゲストをホストに転位させる作用がうかがえる。小笠原の観光は、観光客のみならず、新たな島の担い手をも呼び込んでいる。ただし、移住した新島民のなかには小笠原におけるエコツーリズムのあり方に馴染めず、島外にて再びゲストに転位する者たちもいる。ここからは、エコツーリズムによって揺れ動くゲストとホストという現象を認めることができる。

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