観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
観光倫理研究の課題と展望
宮本 佳範
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 4 巻 2 号 p. 135-148

詳細
抄録

情報倫理、生命倫理、経営倫理など、倫理は各分野の重要事項として位置付けられている。しかし、観光研究・教育において倫理は未だ主要な分野として位置付けられておらず、観光倫理に対する認識自体定まっていないのが現状である。その要因を分析すると、観光に関わるステークホルダーの複雑性と倫理の判断基準の曖昧さの問題があることがわかった。そこで、まず観光倫理に関わる積極的行為主体と倫理的配慮対象の関係について整理した。そして、倫理の判断基準を明確にするために、観光倫理を、観光に関わる者の目指すべき方向性として既に広く合意されている持続可能な観光のための倫理として位置付けた。その観光倫理を実践的なものにするためには、現実の問題に関する実証的研究、それに基づく倫理的行為基準の構築に向けた研究、さらに持続可能な観光のための教育に向けた研究が必要である。その中で、教育、特に観光者に対する教育機会・内容に関する研究が遅れていることを指摘した。そして、観光者を含め幅広い行為主体を対象にした教育を実践するために、持続可能な観光のための教育をESD(持続可能な開発のための教育)に位置付けるという方向性を示した。

著者関連情報
© 2016 観光学術学会
前の記事 次の記事
feedback
Top