観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
地域鉄道のアトラクション化
のと鉄道・銚子電鉄・三陸鉄道を事例とした上演論的分析
安 ウンビョル
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 8 巻 1 号 p. 15-26

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抄録

近年、路線の存廃危機の中で活発に採用されている地域鉄道の観光列車・イベント列車を、移動の「手段」がそれ自体で観光の「目的」になったという側面に注目しながら、そこで観光の場面がどう構成されているのかを上演論的視座に基づいて3重の上演に分けて分析する。まずは、のと鉄道の観光列車を事例に、見る主体と見られる客体を分ける車窓が、観光のパフォーマンスの小道具としてはたらく場面を見る。次に銚子電鉄のイベント列車を事例に、アトラクション化した鉄道を、乗客をもその演者として巻き込む一つの自己完結的なパフォーマンスとして読み取る。最後に、このような列車を含むその観光への取り組みがメディアを介してより広い範囲での観客からまなざしが向けられる側面について、三陸鉄道と『あまちゃん』を事例にして考察する。情報メディアが遍在する環境の中で地域鉄道のアトラクション化は、また、このように自己の衰退に言及することによって成立する観光には、現代社会の諸現象に通底する再帰性の特徴を見つけることができる。

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