2020 年 8 巻 1 号 p. 3-14
本稿では、政治的に推進されてきた中国のレッドツーリズムのインタープリテーションが情報化社会でいかに変容するのかを検討する。天安門広場の国旗掲揚式を事例として取り上げ、ソーシャルメディアにおける「擬似的なボトムアップ式のレッドツーリズム」の創出を明らかにする。ソーシャルメディアのユーザーは自分の手で観光の「聖地」を作り出していると認識しがちであるが、実はソーシャルメディアの運営主体による操作と審査が裏で作動しており、ユーザーの発言と投稿を特定の方向に誘導している。そのため、ソーシャルメディアは従来の権力のメカニズムを柔軟化、不可視化することによって、レッドツーリズムに関する新たな様式のオーセンティシティを作り出していると考えられる。