観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
8 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • ソーシャルメディアが作る「オーセンティシティ」
    王 楚君
    2020 年 8 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、政治的に推進されてきた中国のレッドツーリズムのインタープリテーションが情報化社会でいかに変容するのかを検討する。天安門広場の国旗掲揚式を事例として取り上げ、ソーシャルメディアにおける「擬似的なボトムアップ式のレッドツーリズム」の創出を明らかにする。ソーシャルメディアのユーザーは自分の手で観光の「聖地」を作り出していると認識しがちであるが、実はソーシャルメディアの運営主体による操作と審査が裏で作動しており、ユーザーの発言と投稿を特定の方向に誘導している。そのため、ソーシャルメディアは従来の権力のメカニズムを柔軟化、不可視化することによって、レッドツーリズムに関する新たな様式のオーセンティシティを作り出していると考えられる。
  • のと鉄道・銚子電鉄・三陸鉄道を事例とした上演論的分析
    安 ウンビョル
    2020 年 8 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、路線の存廃危機の中で活発に採用されている地域鉄道の観光列車・イベント列車を、移動の「手段」がそれ自体で観光の「目的」になったという側面に注目しながら、そこで観光の場面がどう構成されているのかを上演論的視座に基づいて3重の上演に分けて分析する。まずは、のと鉄道の観光列車を事例に、見る主体と見られる客体を分ける車窓が、観光のパフォーマンスの小道具としてはたらく場面を見る。次に銚子電鉄のイベント列車を事例に、アトラクション化した鉄道を、乗客をもその演者として巻き込む一つの自己完結的なパフォーマンスとして読み取る。最後に、このような列車を含むその観光への取り組みがメディアを介してより広い範囲での観客からまなざしが向けられる側面について、三陸鉄道と『あまちゃん』を事例にして考察する。情報メディアが遍在する環境の中で地域鉄道のアトラクション化は、また、このように自己の衰退に言及することによって成立する観光には、現代社会の諸現象に通底する再帰性の特徴を見つけることができる。
  • アスリート・パラアスリートをめぐって
    橋本 和也
    2020 年 8 巻 1 号 p. 27-43
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    スポーツ観光は「アクティヴィティ、場、ヒト」の3要素が複雑に関係しあって構成される。その世界的メガ・イヴェントが「オリンピック観光」である。そこには政治・経済状況、都市計画、自然災害、人権問題、アンチ・ドーピング体制などの様々な人的・非人間的なアクターが大きく関与する。その混淆的なネットワークのあり方が「オリンピック観光」特有の姿を創出しているのである。本論では、以下の点に注目してオリンピック観光・スポーツ観光を明らかにする。(1)文化・政治・経済的イヴェントとしてのオリンピック、(2)オリンピック期間中とそれ以前・以後の観光、(3)アスリート・パラアスリートにとっての真正性、(4)スポーツ観光における「パフォーマー観光者」としてのアスリート、(5)パラアスリートが拓く新たな「知覚」「ものの見方」(2要素)についての存在論的考察をした後に、この2要素を加えた5要素をスポーツ観光研究の基本的視野に据えることを提案する。
  • 伊藤 央二
    2020 年 8 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、これまでの国内のスポーツツーリズム政策の変遷を概観すること、ポスト東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020)のスポーツツーリズム政策について考察することである。日本スポーツツーリズム推進機構の創設や地域スポーツコミッションの推進等、東京2020だけではなく、ポスト東京2020のスポーツツーリズムの持続的発展に向けた土台作りが国内で着々と進んでいる。また、東京2020の最大のレガシーがインバウンド観光の活性化であると期待されているように、スポーツツーリズム政策として日本の自然が存分に活かされたウィンタースポーツ、登山・ハイキング・トレッキング、ウォーキング、サイクリングなどを含むアウトドアスポーツツーリズムと日本発祥・特有の柔道、空手、剣道,大相撲を観光アトラクションとした武道ツーリズムが推進されている。この2種類のスポーツツーリズムは日本を魅力的なスポーツツーリズムデスティネーションに変貌させる可能性を秘めるが、オーバーツーリズムや真正性/商品化といった議論を深め、今後のスポーツツーリズム政策に取り入れていく必要性がうかがえる。加えて、東京2020のレガシーを最大限に活用した競技施設使用・ツアー、ミュージアム見学、ホストタウン訪問などのサプリメンタル観光行動が、ポスト東京2020のスポーツツーリズム振興に効果的であると考えられる。
  • スポーツとツーリズムの文化史
    大野 哲也
    2020 年 8 巻 1 号 p. 55-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    2019年にラグビーワールドカップが日本で開催された。2020年にはオリンピックとパラリンピックが日本で開催される。このように、いまスポーツが空前の熱気を帯びている。だがその一方で、スポーツは体罰、八百長、ドーピングなどのさまざまな社会問題を起こし続け、連日のようにメディアを賑わせている。
    ツーリズムもまた、空前の熱気を帯びている。ツーリズムの隆盛は、京都や渋谷などの観光地を訪れてみれば一目瞭然である。そこは朝の通勤ラッシュと見紛うほどの混雑ぶりだ。だがその一方で、ツーリストが集中することで地元コミュニティに過大な負荷をかけてしまうというオーバーツーリズム現象は、ツーリズムによって地域の活性化や、経済成長を目論む政府方針の大きな課題となっている。
    ともあれスポーツとツーリズムは、現在グローバルな規模で人気を博しているわけだが、両者の文化的出自がともに18~19世紀のイギリスであるという事実は興味深い。しかもこの共通性は偶然の一致ではない。
    そこで本論文では、スポーツとツーリズムの文化史を再構成しながら、21世紀におけるスポーツとツーリズムの社会的可能性を展望してみたい。
  • スポーツツーリズムの資源としての「ニュースポーツ」の可能性とは?
    市井 吉興
    2020 年 8 巻 1 号 p. 71-83
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、「ニュースポーツ」やサーフィン、スノーボード、スケートボードなどの「ライフスタイルスポーツ」に注目し、これらがスポーツツーリズムの資源として可能性があるのか、否かを検討することにある。本稿執筆中の2019年9月、ラグビーワールドカップが日本で開催された。また、2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、2021年にはワールドマスターズゲーム関西が開催される。まさに、この3年間は「ゴールデン・スポーツイヤーズ」(間野, 2015)と称されている。しかし、当然のことながら、このような国際的なスポーツメガイベントが定期的に日本で開催されるわけではない。それゆえに、私たちは「ポスト・ゴールデン・スポーツイヤーズ」のスポーツツーリズムを構想する必要に迫られている。しかも、このような課題に応えるには、スポーツツーリズムの資源となる「スポーツ」の検討が求められている。まさに、スポーツツーリズムの資源としての「スポーツ」を問い直すことは、近代スポーツへの批判やオルタナティブの提示となるとともに、インバウンド頼みのスポーツツーリズムへのオルタナティブの提示とも関連すると思われる。
  • レガシー構想以後の「オリンピックと観光」の地平
    小澤 考人
    2020 年 8 巻 1 号 p. 85-101
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    現在では自明ともいえる「オリンピックと観光」の結びつきは、一世紀を超える近現代オリンピック史の中では比較的最近のことであると言われる。そこで本稿では、第一に、現在のように「オリンピックと観光」が結びつくに至った文脈と経緯について検討した。その結果、21世紀のオリンピック開催に正当性を与えるIOCのレガシー構想によって、開催都市がレガシー戦略の一環として観光政策に力を入れる傾向が高まることを指摘した。第二に、それを最も象徴する近年の大会として、2012年ロンドン大会における観光政策に焦点を当て、特にオリンピック開催地における都市再生の動向に注目してその観光学的意義を考察の対象とした。その結果、(a)プレイス・イメージの向上に関わるブランディング戦略とともに、(b)オリンピック開催地をデスティネーションとして創造する都市再生のプロセスを広義の観光政策として捉えることが可能であり、かつ必要でもあること、またこれに関連して「居住・訪問・ビジネス」の三要素を合わせもつクリエイティブシティ(創造都市)の戦略など、都市再生のプロセスについても広義の観光政策の理論的課題と結び付けて考察することの必要性を指摘した。
  • 記憶を可視化する景観創造としてのアートプロジェクト
    山田 香織
    2020 年 8 巻 1 号 p. 103-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
  • ポケモンGOが観光研究に投げかけた三つの問い
    権 赫麟
    2020 年 8 巻 1 号 p. 107-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
feedback
Top