観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
9 巻, 1 号
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  • 敷田 麻実
    2021 年 9 巻 1 号 p. 5-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/31
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    1990年代以降、観光による地域振興や地域再生である観光まちづくりが国内各地で推進され始めた。観光で地域の社会や経 済を豊かにするというこの試みは、観光振興だけではなく、地域振興に観光が貢献できるという主張であった。一方、この20 年間で、観光の意味やスタイルは変容し、地域もグローバル化やICTによって変化した。また近年は、観光地域づくり法人であ るDMOによる観光地の運営も試みられており、1990年代から続く従来の観光まちづくりが指向される一方で、地域づくりを目 的にした観光まちづくりは、地域経営や組織的運営に変容し始めている。本論文では、グルーバル化とICTの発展による急激な 社会環境の変化を前提に、観光における資源利用、価値認識、政策の変化が観光まちづくりをいかに変化させたのか、さらに は現在進められている観光地経営の変容について議論し、新しい観光まちづくり論について考察した。
  • 混在概念の弁別とさらなる外延
    越智 正樹
    2021 年 9 巻 1 号 p. 23-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    観光まちづくり論は四半世紀の蓄積があり、その全体をレビューする優れた諸論考も公刊されてきた。それでもなお我々が新たな地平を求めると言うとき、そこにはいかなる閉塞感や議論の鈍化が存在しているのだろうか。
    これを考察するために本論はまず、観光まちづくりの英訳語法の分析を行い、その結果として2点の概念混在を明らかにする。 1つはcommunity developmentとtown planningであり、もう1つは観光まちづくりと観光地域づくりである。その上で沖縄県の2つの事例(首里城の焼失、南城市小谷の集落歩き観光)を取り挙げ、上述の概念混在に留意した考察を行うことで、観光地域の危機をベースとした観光まちづくりと、観光振興から降りる観光まちづくりという、新たな論点の可能性を論じる。
    最終的に本論が主張するのは、観光振興/観光地域づくりとcommunity development/town planningとは互いに離合を繰り返すものであり、その離合の磁場を表象するのが観光まちづくりではないかということである。混在概念を常に再分節化することを通じて、その離合の運動を正確に把捉することが、新たな地平を開くのではないだろうか。
  • 早川 公
    2021 年 9 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、筆者の研究関心である人類学的まちづくり論の観点からまちづくりの議論を辿り、その実践の理論の枠組みを経由し、そこから「アナーキーなまちづくり」というまちづくり実践の展開について論じたものである。
    観光まちづくりの実践とその研究は、まちづくりにおける経済的活性化の側面に光を強く当ててきた。しかしCOVID-19の世界的流行にともなって、観光まちづくりを含む観光研究は、議論の土台そのものから改めて問い直す必要がある。そこで本稿は、デヴィッド・グレーバーの議論を参照し、これからのまちづくりを検討した。
    観光まちづくりをよりオルタナティヴな未来に向けた「変革のための企画」として再構想するために、本稿では、「アナーキーなまちづくり」の議論が「新たな地平」をひらくに資するかどうかを検討した。「アナーキーなまちづくり」とは、互酬性に基づきながら、即興性や協働性を発揮して生活空間を再編していくプロジェクトのことを指す。そしてその実践の理論は「自己の受容と把握」「他者との協働の作法」「世界認識の理論」の3つの方向性があることを確認した。今後は、現実のまちづくり活動のエスノグラフィックな関与を通じて、新たな研究方法と全体を見渡す理論の整備が必要となる。
  • 都市デザインの視点から
    阿部 大輔
    2021 年 9 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/31
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    本稿は、新型コロナウィルスがもたらしたパンデミック以前の観光スタイルの象徴であり、世界の観光都市で発生していたオーバーツーリズム現象について、その社会的背景、概念の定義、問題の構造、地域・都市への負の影響、反観光を主題とする社会運動の発生、を概説する。その上で、パンデミックの収束を見据えつつ、界隈の生活環境に根ざした都市デザイン観点から、パンデミック後のツーリズム—すなわち「ポスト・オーバーツーリズム」—の新たな観光戦略の姿を問う。
  • 境界を越境するアクターが生み出す現代社会の様相
    濱野 健
    2021 年 9 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/31
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