抄録
1990年代以降、観光による地域振興や地域再生である観光まちづくりが国内各地で推進され始めた。観光で地域の社会や経
済を豊かにするというこの試みは、観光振興だけではなく、地域振興に観光が貢献できるという主張であった。一方、この20
年間で、観光の意味やスタイルは変容し、地域もグローバル化やICTによって変化した。また近年は、観光地域づくり法人であ
るDMOによる観光地の運営も試みられており、1990年代から続く従来の観光まちづくりが指向される一方で、地域づくりを目
的にした観光まちづくりは、地域経営や組織的運営に変容し始めている。本論文では、グルーバル化とICTの発展による急激な
社会環境の変化を前提に、観光における資源利用、価値認識、政策の変化が観光まちづくりをいかに変化させたのか、さらに
は現在進められている観光地経営の変容について議論し、新しい観光まちづくり論について考察した。