新型コロナウィルス感染症(COVID-19)後の大学で、観光を学ぶ価値とは何か。この問いを学術的に探究するため、本稿は大学における観光教育の歴史を概観したうえで、今日の観光教育論における準拠点と目されるJ. トライブの研究を再検討し、その主要な論点を考える。記念碑的論文「哲学的実践者」(2002年)を含むトライブの観光教育論を分析し、職業訓練とリベラル教育のバランス、エシカルな観光、フロネシス、スチュワードシップなどの概念を理解したうえで、今日の日本社会において求められる観光教育のための道筋と方法論を考える。トライブは「哲学的実践者」の養成を観光産業の人材あるいはホストに限定して構想したが、本稿ではそれを観光する人びとあるいはゲスト=ツーリストの全般として捉え返し、これからの観光教育ではリベラルでエシカルなツーリストの育成が課題となることを指摘した。