抄録
【目的】創薬初期における肝毒性評価系への応用を目的として,肝毒性を惹起することが報告されている各種化合物を曝露したときの,肝細胞及び肝臓におけるタンパク質発現へ及ぼす影響をプロテオミクスの手法を用いて調べ,肝毒性マーカーの可能性及びタンパク質発現変動のin vivo-in vitroの相関性について検討した。【方法】雄性ラットから単離した肝細胞を,アセトアミノフェン(10mM),アミオダロン(50μM),テトラサイクリン(500μM)および四塩化炭素(1mM)に曝露し,6及び24時間後に細胞を回収した。また,雄性ラットに,これらの化合物をそれぞれ1000mg/kg,1000mg/kg,2000mg/kg及び1mL/kgの用量で単回経口投与した後24時間に肝臓を採取した。培養肝細胞中及び肝臓中の総タンパク質を7M Urea/2M Thioureaを含むLysis溶液中に回収し,これを2次元電気泳動により展開してタンパク質を分離した。画像解析の結果から,コントロール群に対して曝露群における発現が2倍以上変動するかまたはユニークなスポットをゲルから切り出し,トリプシンによるゲル内酵素消化後,常法に従いタンパク質を同定した。【結果および考察】ラット肝細胞への各種薬物の曝露により,各薬物の肝毒性発現メカニズムに依存したタンパク質群の発現量の変化が認められた。発現の変動が確認されたタンパク質のうち,酸化ストレスに関連するタンパク質の発現が,各化合物の曝露により共通して変化していることが確認され,これらがin vitro評価系における肝毒性の指標となり得る可能性が示唆された。また,各種薬物がラット肝臓におけるタンパク質発現へ及ぼす影響についても検討を進めており,in vitroとin vivoでのタンパク質の発現変動およびマーカータンパク質の相関性についても考察する。