抄録
【目的】 フェノバルビタール(PB)投与による血清中サイロキシン(T4)濃度の低下作用発現機構やその動物種差について検討した。【方法】 マウス、ハムスター、ラットおよびモルモットにPB (80 mg/kg)をそれぞれ4日間連続投与し、最終投与後1日に血清中の総T4、遊離T4および甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度を測定した。また、その時に[125I]T4を静脈内投与し、血中からの[125I]T4のクリアランス、血中[125]T4とトランスサイレチン(TTR)あるいはアルブミンとの結合率、[125I]T4の組織分布量を測定した。【結果・考察】 PB投与により、マウス、ハムスター、ラットの血清中総T4および遊離T4濃度は有意に低下した。一方、血清中TSH濃度は、ハムスターでのみ有意に低下した。[125I]T4の血清クリアランスおよび分布容積は、マウス、ハムスター、ラットで有意に増加した。各対照動物において[125I]T4の組織分布量は肝臓で特に高く、PB投与により、マウス、ハムスターおよびラットにおいて肝臓への[125I]T4の分布量が有意に増加した。また、肝臓単位重量当たりの[125I]T4の分布量はマウスでのみ増加した。また、肝臓のKp値はマウス、ラットで増加し、ハムスターでは増加傾向が見られた。一方、血中[125I]T4とTTRあるいはアルブミンとの結合率は、いずれの動物においても変化しなかった。なお、モルモットの血清中総 T4のほか、いずれの測定値もPB投与により変化しなかった。以上の結果から、マウス、ハムスター、ラットにおいて、PB投与による血清中T4濃度の低下は、血中から肝臓へのT4の移行量の増加に起因することが示唆された。現在、PB投与による肝実質細胞への[125I]T4の取り込み量および肝臓におけるT4トランスポーターの発現量の変動についても検討している。