日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-26
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優秀研究発表賞応募演題
クロバザム投与によるラット肝重量変化と肝CYPアイソフォームの遺伝子発現変動について
*宮脇 出堀江 泰志河内 眞美三瀬 いずる船橋 斉田中 浩二安場 正子
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抄録
【目的】クロバザム(CLB)はラットへの短期投与で甲状腺重量増加を,長期投与で甲状腺腫瘍を誘発するが,我々はこれらの変化に先立ち肝重量が増加することを報告している(Toxicology Letters,2003).肝重量の増加は肝薬物代謝酵素誘導に基づくものと考えているが,詳細な検討結果はない.今回,CLBの反復投与によって起こる肝重量増加と肝薬物代謝酵素誘導の関係について経時的に検討したので報告する.
【方法】5週齡のSD系雄性ラットにCLB 400mg/kg/日を反復経口投与し,投与後1, 3, 7, 14, 28日並びに休薬7, 14日にラットをエーテル麻酔下で放血致死させて,肝臓を摘出した.摘出した肝臓について,重量測定後,病理組織学的検査及びcytochrome P450 (CYP)含量の測定を行った.さらに肝臓の一部からtotal RNAを抽出しCYP分子種のmRNA発現解析を行った(PAM chip, Olympus).
【結果及び考察】CLBの反復投与により肝重量増加及び小葉中心性の肝細胞肥大といった変化に加え,肝CYP含量の増加が認められた.また,CYP分子種のmRNA発現解析の結果,初回投与後に広範なCYP分子種のmRNAが一過性に発現し,投与を重ねることで,そのうちの幾つかの分子種(CYP2B1, 3A1, 3A2)の発現が増強される傾向が認められた.これに対し,休薬により肝重量の増加は認められなくなり,CYP含量も減少した.さらにCYP分子種のmRNA発現は対照群と同等又はそれ以下に抑えられ,CYP含量の減少と相関していた.以上のことから,CLBの反復投与によって起こる雄ラットの肝臓重量の変化は,第I相薬物代謝酵素の誘導に一部起因することが明らかとなり,それらの発現は転写レベルで調節されている可能性が示唆された.
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© 2005 日本毒性学会
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