日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-25
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優秀研究発表賞応募演題
Phenobarbital代謝におけるSD及びWistarラット間の系統差
*岸田 知行高島 佳代子武藤 信一相馬 晋司笠原 寛子小林 冴香本川 佳幸田中 智筒井 将林 守道田村 啓村上 真西山 雅彦黒田 淳二
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抄録
【目的】安全性試験に用いられるラットの系統は日米欧間でしばしば異なっている。SD及びWistarラットは特に使用頻度の高いクローズドコロニーであり,一般的に両系統間の体重,生存率及び自然発生腫瘍に関する差異は知られているが,毒性発現に関して重要なファクターである薬物代謝の差異に関する報告は少ない。今回,我々はPhenobarbital(PB)を用いて,SD及びWistarラットにおける肝薬物代謝の系統差を検討した。
【方法】8週齢の雄性SDラット(Crj:CD(SD) IGS)及びWistarラット(BrlHan:WIST@Jcl(GALAS))にPBを3日間投与(i.p.,60 mg/kg/日)した後,肝臓における薬物代謝酵素(CYP1A1, 1A2, 2B1, 2C6, 2D2, 3A1, 3A2及び4A1, UGT2B1, GSTYa1及びYa2)のmRNA量を測定した。また,肝ミクロソーム分画における薬物代謝活性(Testosterone 6β, 7α, 16α, 16β, 2α及び2β水酸化,EROD (7-ethoxyresorufin-O-deethylase), MROD, PROD, Diazepam C3水酸化及びN脱メチル化,β-Estradiol 3-OH-及び17β-glucuronide)を測定した。併せて,肝臓の病理組織学的検索を実施した。
【結果・考察】対照群では,WistarラットでのCYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量が高かった。PB投与群では,両系統共に文献的に知られている薬物代謝酵素群が誘導され,CYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量は対照群と同様にWistarラットで高値を示した。病理組織学的には,両系統共に電顕観察で酵素誘導を示唆する肝細胞内滑面小胞体の増加が小葉中心性に観察され,Wistarラットで強く発現する傾向が認められた。一方,発現量に系統差が認められた薬物代謝酵素を反映する代謝活性(EROD, MROD, Diazepam C3水酸化,β-Estradiol 17β-glucuronide)には明らかな系統差は認められなかった。以上,薬物代謝活性には顕著な系統差はみられなかったが,CYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量に系統差が認められたことから,これらの薬物代謝酵素が飽和に達するような領域ではラットの系統によってトキシコキネティクス及び毒性所見に差が生じる可能性が考えられた。
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© 2005 日本毒性学会
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