日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-28
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優秀研究発表賞応募演題
dicyclanilのマウス肝発がん機序に関する研究:酸化的ストレスの関与
*本 光喜梅村 隆志岡村 美和六車 雅子樫田 陽子町田 登三森 国敏
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抄録
【目的】我々は昨年の本会で、マウス非遺伝毒性肝発がん物質であるdicyclanil(DC)の発がん過程における酸化的ストレスの関与の可能性について報告した。今回、その関与の機序を更に検討するため、二段階肝発がんモデルを用いたin vivo実験、およびDCによる活性酸素種(ROS)の産生を明らかにするためのin vitro実験を実施した。【方法】正常マウスないしdimethylnitrosamine (DMN)によるイニシエーション後に部分肝切除(PH)を施したマウスに、0、1500 ppmのDCを13および26週間混餌投与し、その肝臓について病理組織学的検索、代謝・酸化的ストレス関連遺伝子の発現解析、酸化的DNA損傷マーカーである8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)ならびに脂質過酸化レベルの指標としてチオバルビツール酸反応物質(TBARS)の測定を実施した。in vitroの検討では、マウス肝ミクロソームとDCを反応させた後のROS産生量を測定した。【結果・考察】in vivoの検討では、DMN+DC群ではgamma-GT陽性巣数および総面積の顕著な増加が認められ、総面積は投与13週目に比べ26週目でさらに高値を示した。遺伝子発現では、DC群およびDMN+DC群でCYP1a1Txnrd1Ogg1等に有意な発現増強が各時点でみられ、DMN+DC群で最も高値を示していた。TBARSレベルもDMN+DC群が高値を示したが、経時的増加はみられなかった。8-OHdGレベルは、13週目ではDC群で上昇傾向、DMN+DC群では有意な上昇が認められた。26週目については測定中である。in vitroの検討では、DCの0.3 mMから有意なROS産生量の増加がみられた。以上から、DCによる肝発がんには、その代謝過程で生じたROSによる酸化的ストレスが関与する可能性が示唆された。
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© 2005 日本毒性学会
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