抄録
3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (PCB126)は煙突の煤煙や固定廃棄部・土壌中に高濃度に分布し、また他のダイオキシン類に比べその生物濃縮性が高いことが知られている。さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている化学物質である。我々はPCB126胎生期暴露がN-methyl-N-nitrosourea (MNU)誘発ラット前立腺発癌へいかなる影響をおよぼすかについて検討した。SD(slc)ラット妊娠13?19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、2.5ng/kg/day(2.5ng群)、25pg/kg/day(25pg群)、 0ng/kg/day(対照群)連日経口投与を行った。出生後、8週齢から50mg/kg/day Cyproterone acetateを3週間連続経口投与後、100mg/kg/day Testosterone propionateを3日間連続皮下投与後、45mg/kg MNUを単回尾静脈投与を行った。その2週間後から6週間ごとに4週間ごとにTestosteron propionateシリコンチューブを背部皮下に埋設した。ラットは生後75週齢で安楽死後剖検した。前立腺癌発癌率は対照群で最大を示した。これに対し、PCB126胎生期暴露群ではPCB126暴露用量(7.5ug群<250ng群<2.5ng群<25pg群)と相関して発癌率の有意な減少が認められた。本検討から、MNU誘発ラット前立腺発癌が胎生期PCB126暴露によって抑制されることが明らかとなった。