抄録
目的:安全性薬理試験ガイドラインが通達されて3年が経過し,現在コアバッテリー試験は各機関でほぼ定型化され実施している.一方,致死性不整脈(Torsades de Pointes:TdP)の発生を予知する為のQT延長評価試験は,ICHトピック(S7B)での審議が続いており,今だ,取捨選択の段階にある.我々は,QT延長評価モデルの有用性を検討する為,無麻酔のサル・イヌ・慢性房室ブロックイヌ(AV-Bイヌ),イソフルラン麻酔イヌ,ウレタン及びハロセン麻酔モルモットにdl-sotalolを投与し,QT延長作用を比較した.方法:動物はカニクイザル,ビーグル及びハートレイモルモットを用いた(n=3∼4).麻酔はウレタンの静脈内投与またはハロセン,イソフルランの吸入により維持した.dl-Sotalolは無麻酔実験では経口投与,麻酔実験では静脈内投与とした.心電図は無麻酔実験ではホルター心電計(QR2100型),麻酔実験では長時間心電図解析装置 (QS-2200型)を用いて記録した.結果:dl-Sotalol(3 mg/kg)投与後,QTc(F)の最大延長の程度は,無麻酔AV-Bイヌ(p.o.)+55%>イソフルラン麻酔イヌ(i.v.)+30%=ハロセン麻酔モルモット(i.v.)+30%>ウレタン麻酔モルモット(i.v.)+25%の順であった.5 mg/kgを経口投与した無麻酔サル及び10 mg/kgを経口投与した無麻酔イヌのQTc(B)及びQTc(F)の最大延長はいずれも+10∼+15%程度にすぎなかった.一方,無麻酔AV-Bイヌに10 mg/kgを経口投与したところ,約+40%のQT延長を認めた時点でTdPが発生し死亡した.結論:薬物によるQT延長を検出するためには,AV-Bイヌ,イソフルラン麻酔イヌ及びハロセン麻酔モルモットが特に有用であると考えられた.