日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-19
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一般演題(口頭)
胆汁酸誘発肝障害の防御因子であるhydroxysteroid sulfotransferaseの発現調節
*宮田 昌明松田 良樹土屋 広行永田 清フランク ゴンザレス山添 康
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抄録
【目的】Lithocholic acid (LCA) により誘発される胆汁うっ帯型肝障害に抵抗性を示す核内受容体farnesoid X receptor (FXR)欠損マウスはLCAの硫酸抱合を触媒するhydroxysteroid sulfotransferase (ST2A)の発現が亢進している。この欠損マウスを用いてSt2aはLCAにより誘発される肝障害の軽減に関与することを明らかにした。LCAによる肝障害抑制は核内受容体pregnane X receptor (PXR)の特異的アゴニストであるpregnenolone 16α-carbonitrile (PCN)を野性型マウスに投与しても認められ、同時にSt2aの発現の亢進も観察される。そこで本研究では肝障害の防御因子であるST2Aの発現調節におけるFXR、PXRシグナルの関与を明らかにすることを目的とした。
【方法】雌性FXR欠損マウスと野性型マウスにFXRのアゴニストであるchenodeoxycholic acid (CDCA)を混餌 (1%) で5日間摂取させた。あるいはPCN (25 mg/kg)を3日間腹腔内投与した。ヒト肝ガン由来のHepG2細胞にCDCA を48時間処理した。マウス肝臓、HepG2 細胞のST2A mRNA、タンパクレベルをそれぞれRT-PCR, Western blot法により解析した。
【結果】CDCA処理により野性型マウスのSt2a mRNA, タンパクレベル共に有意に減少したが、欠損マウスにおいてはSt2a mRNAレベルの変動は認められず、タンパクレベルはむしろ増加した。FXRにより誘導され種々の転写因子を抑制することが知られているsmall heterodimer partner (SHP)のmRNAレベルは野性型マウスで有意に増加し、欠損型マウスでは減少が認められ、St2a タンパクとSHP mRNAレベルの間に負の相関性が認められた。HepG2 細胞にCDCAを処理すると、CDCA濃度依存的にST2A3 mRNA 及びタンパクレベルの減少が認められ、SHPのmRNAレベルは反対に増加した。一方PCN処理により野性型マウスのSt2a mRNA, タンパクレベル共に増加し、SHP mRNAレベルは減少した。CDCA処理と同様に両者の間に負の相関性が認められた。
【考察】ST2Aの発現はFXRシグナルにより抑制的に、PXRシグナルにより促進的に調節されており、肝ST2Aは一次胆汁酸のCDCA等により平常は低く抑えられているがPXRのシグナルにより誘導され肝障害の防御因子として機能することが示唆された。現在このFXR、PXRシグナルによるST2Aの調節にSHPがどのように関与するのか検討中である。
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© 2005 日本毒性学会
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