日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-25
会議情報
一般演題(口頭)
Diethylstilbestrolの周産期曝露がラット乳腺上皮の分化および腫瘍発生に及ぼす影響
*美谷島 克宏竹腰 進柿本 恒知小泉 治子正田 俊之岩坂 俊基高橋 明美内藤 勝益崎 泰宏宮川 義史長村 義之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】妊娠中に母親がDiethylstilbestrol (DES)を服用した場合,その女児に膣癌が発生することは広く知られている。我々はDES周産期曝露がラットの乳腺上皮の発達,細胞増殖の調節機構及び腫瘍発生に及ぼす影響について検索した。 【方法】DESの10及び100μg/kg(低及び高用量)を,妊娠12日目から出産後の分娩21日目まで母ラットに経口投与した。その雌仔ラット(F1)が7週齢に達した時点で7,12-Dimethylbenz(a)anthracene (DMBA) 100mg/kgを単回経口投与し,その4週間後にF1の乳腺を採取し検索に用いた。対照群として周産期に母獣に溶媒を投与し,F1へのDMBA処置なしの正常対照群及びDMBAを処置したDMBA単独群を設定した。F1の乳腺は病理組織学的検査に加え,免疫組織化学染色(IHC)で細胞増殖活性(ki-67及びCdk2)及びApoptosis発現について検索した。さらにTerminal End Bud (TEB)の上皮細胞をLaser Capture Microdissection法により採取し増殖因子やシグナル伝達関連因子のmRNA発現について検討した。【結果】高用量のF1のみで性周期の異常,剖検時の下垂体重量増加及び子宮重量低下が認められた。F1の乳腺の病理組織学的検査では,高用量のみで腺房形成,乳汁分泌及び乳管の拡張が認められた。また腫瘍性小結節はDMBA処置を施した全群で認められたが,発現状況には群間で差はみられなかった。IHCによる乳腺上皮の細胞増殖活性は,DMBA単独群に対し低用量ではTEB及び導管上皮で陽性細胞が高率に確認され,高用量では腺房上皮で多数の陽性細胞が認められた。【まとめ】DES周産期曝露はF1の乳腺上皮の分化に影響することが明らかとなった。特に低用量ではDMBA発癌の標的組織であるTEBで高率な細胞増殖活性を示し腫瘍化促進への可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2005 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top