日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-30
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一般演題(口頭)
非臨床試験における心毒性マーカーとしての心筋トロポニンTの有用性の検討
*高橋 統一正田 俊之鈴木 優典阿部 卓也大信田 慎一山崎 裕次小林 章男菅井 象一郎宮川 義史
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抄録
[目的]心筋トロポニンT(cTnT)は臨床試験において心筋傷害のバイオマーカーとして用いられ,非臨床試験においても心毒性評価の新規バイオマーカーとして注目されている。今回,薬物誘発性のラット心筋障害のバイオマーカーとしてのcTnTの有用性を,検出感度を指標として他の心筋傷害バイオマーカー(CK-MB,LDH1, 2)と比較した。
[方法]6週齢の雄性F344ラットに,isoproterenolを0.1,0.2,0.6及び2mg/kgの用量で単回静脈内投与した。投与後1時間(Group 1)及び投与後24時間(Group 2)に解剖し,心臓の病理組織学的検査を行った。Group 1では投与後1時間に試験紙を用いた全血中のcTnT,血漿中のCK-MB及びLDH1, 2を測定した。Group 2では投与後1,4及び24時間にcTnT,投与後24時間にCK-MB及びLDH1, 2を同様に測定した。
[結果]Group 1:投与後1時間に最低用量の0.1mg/kgからcTnTが陽性反応を示した。0.6mg/kg以上でCK-MB 及びLDH2がいずれも軽度ながら上昇した。最高用量の2mg/kgまで心臓に病理組織学的変化は認められなかった。Group 2:投与後1時間に最低用量の0.1mg/kgから,投与後4時間に0.6mg/kg以上で,投与後24時間では2mg/kgでcTnTが陽性反応を示した。投与後24時間に0.2mg/kg以上でCK-MBが,2mg/kgでLDH1, 2がいずれも軽度ながら上昇した。0.2mg/kg以上で炎症性細胞浸潤を伴う心筋の変性/壊死が認められた。
[考察]ラットにisoproterenolを単回投与した結果,cTnTは他の心毒性バイオマーカーの変化,あるいは心臓の組織学的変化に比較し,低用量あるいは早期に陽性反応を示した。以上の結果から,全血中のcTnT試験紙測定は,心筋傷害の検出感度の観点から,非臨床試験の心毒性評価において有用であると考えられた。
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© 2005 日本毒性学会
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