抄録
【目的】モルモットを用いた薬物評価におけるQT間隔補正式(Bazett、Fridericia、Van de WaterおよびMatsunagaの式)の有用性を評価した。【方法】モルモットを1%ハロセンで麻酔し、体表面心電図を記録した(n=6)。心室筋再分極相終末部を高精度に評価するため、開胸下で左心室心外膜より単相性活動電位(MAP)を記録した。洞調律および心室電気刺激(400 ms間隔)の両条件下でMAP持続時間を測定し(それぞれMAP90およびMAP90(CL400))、これら指標に対する遅延整流Kチャネル阻害薬d-sotalol(0.3および3 mg/kg, i.v.)の作用を評価した。各補正式におけるQTにMAP90を代入することで補正値を算出し、心室筋再分極過程に対する直接効果を反映するMAP90(CL400)との相関を個体毎に評価した。【結果】d-Sotalolは0.3 mg/kg より用量依存的に心拍数を減少させ、QT間隔、MAP90およびMAP90(CL400)を延長させた。Bazett、Fridericia、Van de WaterおよびMatsunagaの式を適用した際の相関係数は0.96以上といずれの補正式でも高い値が得られた。しかし、その中でBazettの式を適用した際の相関係数は他の式に比べて有意に低い値であった。【結論】遅延整流Kチャネル阻害作用を有する薬物をハロセン麻酔モルモットで評価する際には、Fridericia、Van de WaterあるいはMatsunagaの式を用いることが望ましいと考えられた。