抄録
目的:腎臓は毒性評価において重要な臓器のひとつであり、中でも糸球体はネフロンの中で薬物暴露を受ける最初の部位である。ピューロマイシン アミノヌクレオシド(PA)やドキソルビシンなどは糸球体基底膜に障害を与え、サイズ選択性、電荷選択性を変化させる。これら腎糸球体障害は早期に見いだすのが難しいケースが知られており、簡便な指標の測定が望まれる。今回、我々はピューロマイシンを投与したラットを用いて抗ラットアルブミン抗体を含んだ試薬Testant(株式会社BL社製)が腎障害の指標である尿中アルブミン分析に有用かどうか検討した。方法:雌のCrl:CD(SD)ラットに、PA(150mg/kg)を静脈内投与した。投与後、24、48、72時間後(投与1、2、3日)に6時間掛けて尿採取した。各ポイントの尿採取に続いて、頸静脈採血を行った。これらの検体を用いて尿中アルブミン分析を含む尿検査および血清生化学検査を行った。また、投与後78時間に腎臓を摘出し病理評価に供した。なお、尿中アルブミン分析についてはTestantの検出感度を抗ヒトアルブミン抗体含有試薬のそれと比較した。結果と考察:PA投与群の尿中アルブミンはコントロール群と比較し、投与1、2、3日で3倍、6倍、30倍と増加した。また、尿中総タンパクは投与3日で増加した。一方、血清中尿素窒素、クレアチニンは投与3日においても増加が見られなかった。また、PA投与群の腎臓には肉眼的および病理組織的変化は観察されなかった。抗ヒトアルブミン抗体含有試薬との比較においてTestantの感度は約4倍を示した。以上のことから、ラットを用いた毒性試験において、Testantを用いて尿中アルブミンを測定することにより、通常の検査項目では検出されない早期の糸球体障害の指標となる定量的データが得られることが示唆された。