日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY2-1
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酸化ストレスと毒作用発現
酸化ストレス応答とNrf2
*山本 雅之
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抄録
 動物は,体内に酸素を取り込んで炭水化物などを燃やし,エネルギーを得ている.一方,鉄が酸素により錆びていくように,酸素は生体にとっていたみの原因になる重大な環境ストレスである.私たちは,抗酸化酵素やその遺伝子自体の解析ではなく,それらの発現誘導機構の一般を制御する転写因子の活性化機構の解明に焦点を絞り,実際に酸化ストレスを感知するセンサー分子の同定を目指している.私たちは先に,生体が活性酸素に暴露された際には,抗酸化酵素群の遺伝子発現がNrf2-小Maf因子2量体により抗酸化剤応答配列(ARE)を介して誘導されること,さらに,Nrf2活性がKeap1により恒常的に抑制されていることを発見した.生体防御系遺伝子の発現制御の分子機構のさらなる理解のためには,分子レベルと個体レベルでさらなる解析を進める必要がある.活性酸素の刺激により,Nrf2はKeap1による抑制から逃れて安定化し,核移行する.また,移行したNrf2により,解毒酵素や抗酸化酵素群の遺伝子転写が活性化される.Nrf2は約20分の半寿命で分解する非常に代謝回転の速い蛋白質であり,この分解にはKeap1とCul3がE3複合体を形成して関与している.親電子性物質はKeap1によるNrf2の代謝回転を阻害することで,核内のNrf2量を高め,転写誘導を行っている.私たちは最近,詳細なNrf2とKeap1の相互作用の様式をNMR解析とX線結晶構造解析により明らかにし,酸化ストレスの感知に関する「Two site molecular recognition model」を提唱したので,紹介したい.
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© 2006 日本毒性学会
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