抄録
安全性薬理試験においてる薬物の心電図QT間隔延長作用の評価系としてhuman ether-a-go-go-related gene(hERG)発現細胞を用いたホールセルパッチクランプ法がある。パッチクランプ法はhERGチャネルを通過するカリウムイオン電流を直接測定できるため、薬物のhERGチャネルへの影響を評価する上で、信頼性の高い評価系として広く用いられている。現在多くの自動パッチクランプシステムが開発されているが実験条件によっては、従来のパッチクランプ法と自動パッチクランプシステムの評価結果に違いが生じることが報告されている。これまでに、自動パッチクランプシステムで得られた濃度依存曲線が従来のパッチクランプ法で得られたそれと相関性が得られない化合物がいくつかあることを明らかとなった。しかし、その原因として化合物のチャンバー等への吸着を含めて本研究ではPatchXpress 7000Aに続く第二の自動パッチクランプシステムであるQPatch 16について検討を行った。その結果、Thioridazineで得られたIC50値が従来のパッチクランプ法で得られた値と相関性が低いことが明らかとなった。Thioridazineが従来のパッチクランプ法で得られた濃度依存曲線と相関性が低いことについては先に導入したPatchXpress 7000Aでも同様であるため、化合物のチャンバーや化合物貯蔵用ブレート等への吸着以外の問題について、従来のパッチクランプ法を含めて検討を行った。