抄録
【目的】クロム・銅・ヒ素化合物系木材防腐剤(CCA)のリスク評価に必要な毒性情報を集積する目的で、CCAをラットに反復経口投与し、造血器系への毒性影響について検索した。【方法】Wistar系ラット(BrlHan:Wist@Jcl)の雌雄動物にCCAを0、8、40および80mg/kg/dayの用量で、4週間に亘り毎日強制経口投与し、末梢血の血液学的検査、大腿骨骨髄の有核細胞数の測定と細胞分類、剖検、臓器重量測定および病理組織学検査を行なった。骨髄細胞検査では、骨髄塗抹により各細胞種の分類を行い、これに骨髄有核細胞数を乗じ各細胞数を算出した。【結果および考察】80および40mg/kg投与群では、雌においてヘマトクリット値(Ht)、血色素量 (Hb)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量 (MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)が減少し、小球性低色素性貧血が認められた。また、雌雄ともリンパ球増加を伴った白血球数の増加がみられ、雌では網状赤血球数も増加した。80mg/kg投与群では、雄においてもHb、MCH、MCHCが減少し軽微ながら貧血傾向がみられた。骨髄有核細胞数は雌雄ともに変化はなかったが、骨髄細胞分類の結果、雌の80mg/kg投与群において赤芽球の増加ならびにリンパ球、好中球、M/E比の減少がみられた。さらに、胸腺重量の低下が雌雄ともに80および40mg/kg投与群の雌雄および8mg/kg投与群の雌に認められた。貧血に関しては、CCAの主成分の一つであるヒ素のヘム合成抑制作用により誘発された可能性が示唆された。【まとめ】CCAをラットに反復経口投与した場合、造血器系に対し毒性を発現することが明らかとなった。本研究は厚生労働科学研究費補助金(化学物質リスク研究事業)の「木材防腐剤として使用される化学物質のリスク評価に関する研究」プロジェクトの一環として実施された。