日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-223
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内分泌系
高脂血症誘発ラットにおけるコルチコイドの変動
*長尾 英則荒木 誠一磯部 充威湊 宏一久田 茂
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抄録
近年,創薬段階における薬効及び毒性の評価においてバイオマーカーの重要性が高まり,その検索法としてメタボノミクスが注目されている。しかし現時点では,網羅的解析で得られた莫大な情報から特定のバイオマーカーを検出することは困難である。そこで我々は,薬効や毒性の作用機序に関連のある内因性代謝物に対象を絞った解析を検討している。
今回,高中性脂肪食を2週間摂餌させることで高脂血症を誘発させたラットにおいて,トリグリセリド(TG)の代謝産物であるステロイド,特にコルチコイド及びその代謝物の血中及び尿中での変動を検討した。また,PPARγ作動薬及びHMG-CoA還元酵素阻害剤を高脂血症ラットに2週間反復投与したときの変動についても検討した。その結果,高脂血症を誘発させたラットでは,血中TG濃度は有意に上昇し,また血中コルチコステロン濃度が増加したことから,高脂血症時にはコルチコイド産生が亢進している可能性が示唆された。しかし,PPARγ作動薬を投与することで血中TG濃度は投与前と比べて顕著に減少し,コレステロール濃度も軽度に減少した。また,血中コルチコステロン濃度は正常レベル以下,尿中へのコルチコイド排泄量は正常レベルであったことから,PPARγ作動薬は血中TGを低下させることにより高脂血症で誘発されたコルチコイド産生増加を軽減すると推測された。一方,HMG-CoA還元酵素阻害剤を投与しても血中コレステロール及びTG濃度は投与前と比較して変化しなかった。しかし血中コルチコステロン濃度及び尿中コルチコイド排泄量は正常レベルであった。これらのことから,HMG-CoA還元酵素阻害剤は血中脂質濃度に依存しない機序によりコルチコイド産生亢進を抑制する可能性が推測された。
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© 2006 日本毒性学会
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