抄録
AdefovirはともにB型肝炎ウイルス感染の治療薬であり投与量依存的な腎毒性を生じることが知られている。その主排泄経路は尿排泄であり、尿細管分泌を受ける。Adefovirの尿細管分泌において、有機アニオントランスポーター(OAT1)が血液側からの取り込み過程に関与していることが示唆されているが、管腔側への排泄メカニズムは明らかとはなっていない。近年、multidrug resistance-associated protein 4 (MRP4/ABCC4)がadefovirを基質とすることが報告されている。MRP4は腎臓刷子縁膜上に発現していることから、本研究ではadefovirの尿細管管腔中への排泄におけるMRP4の関与についてMrp4ノックアウトマウス(Mrp4KO)を用いて検討した。ヒトMRP4発現膜ベシクルを用いた輸送実験の結果、MRP4を介したATP依存的なadefovirの取り込みが観察された。ATP依存的なAdefovirの輸送は1mMまで飽和せず、そのKm値は大きい(>1mM)ことが示唆された。野生型マウス、Mrp4KOに静脈内定速投与を行い、定常状態において、Adefovirの血漿中濃度、尿中排泄速度、腎臓中濃度を測定した。全身クリアランスの大部分は腎クリアランスにより説明され、糸球体ろ過速度よりも大きいことから、尿細管分泌の関与が示唆された。腎クリアランスはMrp4KOにおいて野生型マウスに比べ有意に低下した(それぞれ16.7 ± 0.2、23.7±1.6 ml/min/kg)。腎組織_-_血中濃度比は、Mrp4KOでは野生型に比べ高く(それぞれ19.5 ± 1.3、13.1 ± 0.8)、腎臓内濃度基準の腎排泄クリアランスはMRP4KOにおいて32%程度に低下した。本実験より、MRP4がadefovirの管腔中への分泌に関与することが示唆された。組織中濃度はこれら化合物の毒性と相関することから、MRP4による排出輸送能がadefovirによる腎毒性発症の要因の一つとなることが予想される。