抄録
[目的] 通常の非臨床毒性試験での予測が困難であるIdiosyncratic agranulocytosis(無顆粒球症)は, 時に敗血症などの重篤な症状を呈すことから, 臨床使用において問題となることがある。その原因の一つとして, 好中球に存在する酵素myeloperoxidase(MPO) により生成される反応性代謝物の関与が考えられている。そこで本研究では, agranulocytosisをひき起こすことが知られている薬剤についてペルオキシダーゼ触媒による反応性代謝物の生成について検討した。
[方法] agranulocytosisを起こすことが知られている12薬剤を, MPOまたはHorseradish peroxidase (HRP), H2O2, グルタチオン誘導体(エチルエステル体またはダンシル化体)を添加したリン酸バッファー中でインキュベーションし, glutathione conjugateの生成の有無をLC/MS/MSを用いて確認した。
[結果・考察]今回検討した12剤のうち, Amodiaquine, Aminoglutethimide, Carbamazepine, Clozapine, Sulfamethoxazoleの5剤で, MPOによる酸化反応で生じた反応性代謝物のgluthathione conjugateが検出された。 また, HRPを用いた系でもほぼ同様の結果が得られた。今回の結果より, 本試験系はぺルオキシダーゼを介した反応性代謝物生成の予測に有用であると考えられた。