日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-51
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
フッ素テロマーアルコールのエストロゲン様作用
*石橋 弘志石田 晴菜松岡 宗和冨永 伸明有薗 幸司
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抄録

近年、新たな環境汚染物質として有機フッ素化合物 (PFOAやPFOS) が問題視されているが、それらの有力な汚染源の一つとしてフッ素テロマーアルコール (FTOHs) が注目されている。FTOHsの環境中における汚染実態に関する知見は蓄積されつつあるが、生物影響に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、in vitro試験系を用いてFTOHsのヒトおよびメダカエストロゲン受容体 (ER) の転写活性化に及ぼす影響を調査した。 試験物質として6:2 FTOH、8:2 FTOH、NFDH、PFOSおよびPFOAを、陽性対照物質として17β-エストラジオールを用いた。ヒトERs (hERαおよびhERβ) とメダカERα (medERα) の転写活性化能の測定は、既報に従い酵母two-hybrid法でおこなった。すなわち各ERsとcoactivator TIF2のタンパク質・タンパク質相互作用により評価した。 結果として、6:2 FTOH、8:2 FTOHおよびNFDHはhERsおよびmedERαを活性化した。しかし、PFOSおよびPFOAはいずれのERsも活性化しなかった。hERsの活性化は6:2 FTOH > NFDH > 8:2 FTOHの順に強く、hERαはhERβに比べ高い感受性を示した。一方、medERαの活性化は6:2 FTOH > 8:2 FTOH > NFDHの順に強く、hERsと比較すると明らかな種間差がみられた。FTOHsによるヒトおよびメダカエストロゲン受容体の活性化を明確に示したのは本研究が初めての報告である。以上のことから、ヒトおよびメダカERシグナル経路を介した潜在的内分泌撹乱性の可能性が示唆され、今後、in vivo試験系を用いてより詳細な生物影響を調査し、生体リスク評価を行うことが極めて重要である。

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© 2007 日本毒性学会
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