日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-52
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
培養ヒト細胞グルタミナーゼ活性および蛋白の発現レベルに対するヒ素化合物の影響
*佐藤 元啓北 加代子鈴木 俊英越智 崇文
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抄録

[目的]2003年に茨城県神栖町(現・神栖市)で起こったヒ素中毒事件では、地下水から主要な汚染物質としてジフェニルアルシン酸(DPAA)が検出された。すでに我々はDPAA処理ヒト細胞蛋白の網羅的解析により、特異的に発現の低下を示すタンパク質グルタミナーゼを明らかにした。グルタミナーゼは、興奮性神経伝達物質グルタミン酸の供給に関わる重要な酵素であり、その発現の異常は神栖町ヒ素中毒患者の中枢神経症状発現機構に関連して重要と思われる。神栖町井戸水中にはDPAAの他にビスジフェニルアルシンオキシド(BDPAO)およびフェニルアルソン酸(PAA)が検出されており、また付近の米よりフェニルメチルアルシン酸(PMAA)といったフェニルヒ素化合物が検出されている。そこで本研究では、フェニルヒ素化合物をはじめ種々のヒ素化合物が細胞内グルタミナーゼの発現および酵素活性に及ぼす影響について検討した。[方法]細胞生存率に殆ど影響を与えない濃度の各ヒ素化合物で処理したヒト肝癌由来HepG2細胞から細胞抽出液を調製し、細胞内のグルタミナーゼ活性の変化およびWestern blot法を用いてタンパクレベルの変動を観察した。[結果および考察]80%以上の細胞が生存する濃度のヒ素化合物で処理したHepG2細胞内のグルタミナーゼ活性およびタンパクレベルを測定したところ、DPAA,PMAA,PAAといった5価フェニルヒ素化合物処理による濃度依存的な活性並びにタンパクレベルの減少が認められた。一方3価のフェニルヒ素化合物であるBDPAOおよび3価の無機ヒ素(iAs(III))では、活性およびタンパクレベルには大きな変化が見られなかった。以上のことから、細胞内グルタミナーゼ活性およびタンパクレベルの減少は5価フェニルヒ素化合物に特異的であると推察される。

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© 2007 日本毒性学会
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