日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-53
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
血管内皮細胞のプロテオグリカン合成に対する亜ヒ酸とビスマスの相互作用
*藤原 泰之稲垣 孝行佐藤 雅彦鍜冶 利幸
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抄録

【目的】環境汚染物質である無機ヒ素は動脈硬化症を含む血管病変発症の危険因子とされる。血管内皮細胞が産生するプロテオグリカンは,血管内腔の抗血栓性や傷害内皮の修復などに重要な役割を果たしている。我々は,亜ヒ酸が血管内皮細胞のプロテオグリカン合成を阻害することを見出した。今回,ヒ素と同族で血管内皮細胞に対して低毒性なビスマスが,亜ヒ酸の毒性を修飾する可能性を検討した。
【方法】コンフルエントの培養ウシ大動脈内皮細胞を亜ヒ酸ナトリウム(2, 5, 10 μM)および硝酸ビスマス(5, 10, 20 μM)存在下,[35S]硫酸で24時間代謝標識し,細胞層と培地に蓄積した放射活性なプロテオグリカンを分析した。
【結果および考察】血管内皮細胞において,亜ヒ酸は非特異的な細胞傷害を伴わずに細胞層と培地画分に蓄積したプロテオグリカンへの[35S]硫酸の取り込みを顕著に減少させた。ビスマスは,細胞層において[35S]硫酸の取り込みを僅かに減少させたが,培地では有意な変化は認められなかった。亜ヒ酸とビスマスが共存した場合,細胞層と培地の両画分において,亜ヒ酸による[35S]硫酸の取り込み阻害がビスマスによって濃度依存的に有意に軽減されることが示された。このような軽減作用は,亜鉛,マンガン,ニッケルおよびコバルトなどの重金属においては認められなかった。血管内皮細胞が産生した放射活性なプロテオグリカンをDEAE-Sephacel陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて分離したとき,亜ヒ酸はヘパラン硫酸プロテオグリカン画分およびコンドロイチン/デルマタン硫酸プロテオグリカン画分への[35S]硫酸の取り込みを共に阻害したが,ビスマスはそれらの阻害作用を有意に軽減させた。以上より,ビスマスが血管内皮細胞に対する亜ヒ酸のプロテオグリカン合成阻害作用を軽減する特異な無機イオンであることが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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