日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY4-3
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抗がん剤開発における前臨床評価
抗がん剤開発における前臨床評価 -抗体医薬
*溝口 啓二
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キーワード: 抗体, 抗がん剤, 安全性評価
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抄録

1990年代後半から複数の抗体医薬が抗がん剤として承認されており、今なお多くの薬剤が開発中である。抗がん剤に関しては、非臨床安全性試験において強い毒性のために十分な高用量曝露が不可能な場合や、治療量と副作用発現量が近似な場合もあるなどの薬剤の特殊性並びに対象疾患の重篤性の面で有効な薬剤を患者に早期に供給する社会的責任性などから、非臨床での安全性試験は、試験内容、実施時期などがケース・バイ・ケースで判断され実施されているのが実情である。一方で、バイオテクノロジー応用医薬品に含まれる抗体医薬はS6ガイドラインに示されているように、交差性、生物活性、免疫原性といった点から安全性評価に適した動物種の選択が大きな課題であり、通常の毒性試験のデザインあるいはパッケージでは対応できずケース・バイ・ケースで考えていかなければならない部分が多い。さらに、抗がん作用を有する抗体医薬といっても、その作用機序は多岐にわたっており、細胞表面の標的分子を認識してADCCやCDCによる殺細胞作用を誘導するもの、リガンドや受容体に結合することにより腫瘍の増殖に関わるシグナルを阻害するもの、また、抗体に化学療法剤や放射性物質を結合させることにより抗原を高発現しているがん細胞に対する特異性を高め殺細胞作用を高めるためのキャリアーとして利用するものなどがある。このように抗がん剤であること、抗体医薬であることの特殊性を鑑みると、非臨床安全性試験の進め方は通常の薬剤でのケースとは異なることは容易に想像できる。本発表では抗体医薬を抗がん剤として開発するにあたり、非臨床安全性試験の申請パッケージについて過去の事例を挙げるとともに、現在の科学レベルと照らしあわせて安全性評価を進めるに当たっての留意点について考察する。

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© 2007 日本毒性学会
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