日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY4-5
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抗がん剤開発における前臨床評価
臨床試験からみた前臨床試験の問題点
*福岡 正博岡本 勇中川 和彦
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抄録

抗がん剤の開発を目的とした臨床試験で臨床第_I_相試験など早期臨床試験の実施にあたっては前臨床試験の情報がきわめて重要である。そこで早期臨床試験を実施する立場から、全臨床試験の問題点を整理する。抗がん剤の臨床第_I_相試験は、毒性の検討が主要なものであり、毒性の種類と程度、用量制限因子(DLT)、最大耐用量(MTD)の推定、次期臨床試験の推奨用量(RD)の決定、薬物動態の検討、有効性の観察などが評価項目となる。第_I_相試験の初回投与量(Starting Dose)は、前臨床試験におけるマウスの10%致死量(LD10)の1/10量またはイヌのTDL(Toxic Dose Low)の1/3量のいずれか低い用量とされ、その後は一定の法則に基づいて投与量を増量する。臨床試験で出現する毒性については、前臨床の毒性試験を参考に予測するが必ずしも一致するものではない。殺細胞性抗がん薬の場合、血液毒性がDLTとなることが多いが、時に前臨床試験で予測されなかったような毒性も出現する。たとえば、イリノテカンの場合、血液毒性に加えて予想外の下痢がDLTとなった。最近の分子標的薬では、血液毒性の出現は少なく、前臨床では見られなかった毒性が出現することが少なくない。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の急性肺毒性も前臨床試験では予測されていなかったし、前臨床で予測された眼症状は臨床ではほとんど問題となっていない。薬物動態の情報も重要であり、Pharmacogenomicsの観点からの前臨床試験が要求されるようになっている。投与スケジュールによって毒性の種類、程度が異なるので前臨床試験においてその違いを明らかにしておくことが要求される。また、蓄積毒性のデータも必須である。最近の抗がん薬の開発は分子標的薬が大半を占めており、POC(Proof of Concept)に関する前臨床試験が必要となっている。最近の抗がん剤の臨床試験の経験から前臨床試験に求めたいことなどについて述べる。

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© 2007 日本毒性学会
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