抄録
医薬品の毒性評価を行うためにはまず、「毒」とは何かを理解しなければならない。「毒」に対する関心は深く、経験を元にした学問として古くから学問として体系づけられている。また自然界や身近にも多種多様の「毒」は存在し、生物はその中でバランスよく生きている。生命維持や健康に影響を与えるものの暴露や摂取は可能な限り避けることが望ましい、また時代とともにヒトが暴露される「毒」の種類も多彩になっている。医薬品は必要に迫られたヒトの英知で創作され効果を期待し摂取される。ではその医薬品の毒性とは何なのか?またそれを評価するとき、化学物質たとえば環境汚染物質や農薬、食品添加物など無意識に摂取・暴露される「毒」と区別して考えることが大前提である。薬の安全性に関しての原則は安全なものは存在しないということである。トキシコロジストの使命は多くの実験データや情報から、ヒトで不利益な現象が発現しない条件を探し出すこと、予測することにある。医薬品の評価に「絶対」という結論はない。もし、あるとすれば何ら薬理作用をもたない医薬品(?)である。毒性評価の考え方について私論を述べてみたい。