日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-4
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毒性発現機序
恒常的なNrf2活性化によるアセトアミノフェン毒性発現の防御
*田口 恵子Jonathan M. MAHER川谷 幸恵鈴木 隆史山本 雅之
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抄録

【目的】転写因子Nrf2は親電子性物質などの刺激により細胞質から核へ移行・蓄積し、主に第II相解毒代謝酵素群の転写を活性化する。この活性化は、非刺激下においてNrf2と結合しているストレスセンサータンパク質Keap1によって制御されている。恒常的なNrf2活性化を示すKeap1ノックアウト (KO) マウスは離乳前に致死となり、その後の解析が不可能であった。そこで、当研究室において確立したKeap1ノックダウン (KD) マウスを用いて、肝毒性を示す解熱鎮痛剤アセトアミノフェン (APAP) の毒性発現抑制における恒常的なNrf2活性化の寄与を調べた。
【方法】Keap1 KDマウス:Keap1flox/-を用いた。APAP投与:700 mg/kgを単回腹腔内投与した。抗酸化剤またはグルタチオン (GSH) 枯渇剤はAPAPと同時投与した。
【結果および考察】Keap1 KDマウスは、成長遅延はみられるものの生殖可能な成獣に成長した。KDマウスでは主要臓器におけるKeap1タンパク質の発現減少がみられ、逆相関的にNrf2標的遺伝子であるNAD(P)H:キノン還元酵素1 (NQO1) の発現上昇がみられた。また、このKDマウス肝臓においてNrf2は恒常的に核蓄積していることを確認した。野生型マウスとKDマウスに致死量のAPAPを投与すると、KDマウスは全例48時間以上生存した。APAP投与後に野生型マウスでは総GSH量の減少がみられるが、KDマウスにおいては定常量に維持されていた。また、野生型におけるAPAP毒性は抗酸化剤NACによって防御できた。一方、GSH枯渇剤BSOとAPAPをKDマウスに同時投与すると、全例15時間以内に死亡した。以上より、APAPの毒性発現を抑制する機構として、恒常的なNrf2活性化による総GSH量の維持が重要な役割を果たしていることが明らかになった。

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© 2007 日本毒性学会
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