日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-5
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毒性発現機序
Nrf2/Keap1システムは神経細胞においてメチル水銀の解毒を促す
*外山 喬士角 大悟新開 泰弘田口 恵子山本 雅之熊谷 嘉人
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キーワード: メチル水銀, Nrf2, 解毒
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抄録

<目的> メチル水銀(MeHg)は生体に取り込まれると、MeHg-システイン複合体となり血液脳関門や胎盤を通過し、水俣病に代表されるように脳や胎児に重篤な症状を与える事が知られている。しかしながらその解毒・排泄機構は明らかにされていない。一方、転写因子Nrf2は第二相解毒代謝酵素群を制御しており、有害金属等に応答し生体の解毒・排泄機構を促す事が報告されている。そこで本研究では、Nrf2がMeHgの解毒に関与するという仮定を基に、MeHgによるNrf2の活性化機構、及びNrf2またKeap1( Nrf2のネガティブ調節因子 )遺伝子のサイレンシングによるMeHg毒性毒性の変化を検討し、MeHgの解毒・排泄におけるNrf2の役割を明らかにする事を目的とした。本研究はMeHgに起因する様々なリスクをNrf2の活性化により予防医学的に軽減していくという展望を持つ。
<方法> 細胞 : ヒト培養神経細胞(SH-SY5Y)を用いた。MeHgによるNrf2活性化の検討 : 抗Nrf2抗体によるウエスタンブロット及びルシフェラーゼアッセイ法によって検討した。細胞毒性 : MTT法で測定した。RNA干渉によるNrf2及びKeap1サイレンシング : リポフェクション法によりNrf2及びKeap1 siRNAを細胞導入した。
<結果・考察> SH-SY5YにMeHgを曝露すると、Nrf2及びNrf2下流タンパク質の発現量が上昇した。さらにルシフェラーゼ法を用いた検討により、MeHgはNrf2結合配列の転写活性を上昇させた。MeHgによる細胞毒性は、Nrf2のサイレンシングにより上昇し、Keap1のサイレンシングにより減少した。これらの結果から、Nrf2はMeHgの解毒に重要である事が示唆される。現在、どのようなNrf2の下流タンパク質がMeHg毒性の軽減に関係するか検討中である。

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© 2007 日本毒性学会
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