日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-7
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毒性発現機序
有機ヒ素化合物ジフェニルアルシン酸誘導アポトーシスにおける転写因子Nrf2とγ-グルタミルシステイン合成酵素の役割
*角 大悟萬治 愛子新開 泰弘外山 喬士熊谷 嘉人
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キーワード: 有機ヒ素, アポトーシス, Nrf2
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抄録

【目的】ジフェニルアルシン酸(DPAsV)の生体影響としてめまい・立ちくらみなどの神経症状を呈することがわかっているが、その毒性発現に対する知見が乏しい。本研究では、DPAsVによる転写因子Nrf2活性化作用とアポトーシス様細胞死との関連性を検討した。
【方法】細胞:マウス初代肝細胞を用いた。タンパク質発現量:ウエスタンブロット法を行った。アポトーシス:AnnexinVを用い、蛍光顕微鏡で検出した。
【結果及び考察】DPAsVの曝露に対し転写因子Nrf2が活性化されるか検討したところ、24時間後から顕著にその活性化が認められた。それに伴い、Nrf2制御下にあるHO-1、γGCSLの発現は一過性に上昇していた。しかしながら、本来Nrf2の活性化に伴いその発現上昇が予想されるγGCSHの発現は、DPAsVの曝露により定常レベルより有意に減少していた。この条件下において、アポトーシスの指標であるカスパーゼ3の活性化が検出され、DPAsVを曝露しAnnexinVで染色したところ、アポトーシス様細胞死を示した。次にDPAsVによるγGCSHの発現減少の機序を調べるために、シクロヘキシミドを添加したところ、DPAsV単独曝露に比してγGCSHの発現はさらに減少したことから、翻訳後の分解が示唆された。さらにカスパーゼ3の阻害剤を用いたところ、DPAsVによるγGCSHの発現減少が抑制されたことから、DPAsVによりγGCSH はカスパーゼ3を介して分解される事が明らかとなった。これらの現象は、動物実験で認められるようなDPAsV長期摂取による肝臓傷害の手がかりとなるかもしれない。

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© 2007 日本毒性学会
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