主催: 日本トキシコロジー学会
【目的】近年,様々な物質により胎児が汚染されており,これによりアレルギー体質の子供(食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,じんま疹,気管支喘息,アレルギー性鼻炎など)が急増しているとの報告がある.我々は,胎児期の汚染が,出生後にどのような影響を及ぼすのか,アレルギー感受性の高いモルモット(ハートレー系)を使用して検索している.今回は手始めの実験として,その結果を紹介する.【方法】予め,卵白アルブミン(OVA)により感作された雌1例(感作モルモット)及び無処置の雌1例(非感作モルモット)をそれぞれ無処置の雄と交配させ,分娩を行った.感作モルモットのF1動物4例及び非感作モルモットのF1動物3例について,いずれも生後約3週齢でOVA(0.1 w/v%生理食塩液)を後肢静脈から1 mL/kgの容量で静脈内投与し,F1動物の全身的アナフィラキシー症状を以下の評点で観察した.-:変化なし.±:立毛,掻鼻,不安感.+:±にふるえ,くしゃみ,呼吸促進が加わる.++:+に排尿,排便,呼吸困難,歩行不安定が加わる.+++:++の症状が顕著でけいれん転倒するが死は免れる.++++:死亡.【結果及び考察】非感作モルモットのF1動物は何ら全身性アナフィラキシー反応を示さなかった.これに対し,感作モルモットのF1動物では,2例が+,1例が+++,1例が++++となり死亡に至った.即時型アレルギーと言われる上記症状は,細胞親和性抗体(主にIgE)が関与しており,これは遺伝する可能性を示唆する結果となった.