日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-23
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生殖発生幼若毒性
妊娠マウスにおけるTriphenyltin (TPT) の体内動態
*伊藤 健司上田 英典横山 英明伊藤 徳夫中西 剛田中 慶一
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抄録

tributyltinやtriphenyltinなどの有機スズ化合物は、巻貝類の雌に雄の性徴発達を示すインポセックスを誘導することから、近年、ヒトを含む哺乳動物についてもその内分泌撹乱作用が懸念されてきた。最近我々は、これらの有機スズ化合物が、核内受容体retinoid X receptor (RXR)及びperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)γの強力なdual agonistであることを明らかにした。RXR、PPARγは胎児や胎盤の器官形成や分化にも大きく関与しているため、妊娠時に有機スズ化合物に暴露した場合、胎盤や胎児にもその影響が及ぶ可能性が考えられる。しかしながら、妊娠動物における有機スズ化合物の体内動態に関する報告は皆無であり、胎盤および胎児への移行性・滞留性についても未だ明らかとされていない。そこで本研究では、妊娠マウスにおけるtriphenyltin hydroxide (TPTOH) の体内動態について検討を行った。
妊娠11.5日目のICRマウスに0.1MBq/0.45mg/kgの14C-TPTOHを腹腔内投与し、経日的に各臓器・糞尿を回収して、その放射活性を測定した。検討の結果、膵臓、肝臓、副腎、腎臓において高い放射活性が認められた。各臓器における放射活性は投与後1~6時間にピークに達した後経時的に減少し、投与後24時間で45%以上が糞尿排泄されることが明らかとなった。この結果より、TPTOHの体内半減期は約24時間である可能性が示唆された。一方で、胎児においては投与後6~144時間まで放射活性の減少がほとんど認められなかった。また、肝臓、胎盤及び胎児から脂溶性物質を抽出し、二次元TLCによって分画された放射活性物質について解析を行った。その結果、検出された放射活性物質はTPTOHの未変化体であり、その代謝物由来の放射活性はほとんど検出されなかった。これらの結果から、TPTOHは、胎盤を通過して胎児に移行した後は代謝、排泄されにくく、貯留する傾向を示すことが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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