日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-68
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脳神経系
難燃剤decabromodiphenyl ether(DBDE)のラット発達期暴露に起因する脳海馬CA1領域特異的な発現変動遺伝子のプロファイリング
*三枝 由紀恵渋谷 淳冨士本 仁禹  桂炯高橋 美和井上  薫禹  麻美三森 国敏広瀬 雅雄
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抄録
発達期での甲状腺機能低下によりニューロンやオリゴデンドロサイトを標的とした脳発達障害が懸念されるが、難分解・高蓄積性化学物質には弱いながらも抗甲状腺作用の疑われるものが多い。本研究では、既存毒性評価系では影響が検出されにくいこれらの物質に対応できる、発達期中枢神経影響評価系の確立を目的として、臭素化難燃剤に属し、弱い抗甲状腺作用が指摘されているDBDEを発達期暴露したラット児動物脳でのニューロンの傷害指標遺伝子探索を、抗甲状腺剤を陽性対照とした海馬CA1特異的なマイクロアレイ解析により行った。【方法】雌SD:IGSラットに妊娠10日から離乳時(生後21日)までDBDEを10、100、1000 ppmの割合で混餌投与、あるいは抗甲状腺剤のmethimazoleを200 ppm、propylthiouracilを3、12 ppmの割合で飲水投与した。暴露終了時に雄児動物脳を採取し、マイクロダイセクション法により切り出した海馬CA1をAffymetrix GeneChip (230 2.0) により解析した。生後11週では、CA1ニューロンの分布を検討した。【結果および考察】生後11週で、抗甲状腺剤暴露によりCA1錐体細胞層外に存在するニューロン数が増加して分布のばらつきを示し、白質深部に異所性灰白質が観察されたが、DBDE暴露例ではニューロン分布に変化は認められなかった。暴露終了時のCA1特異的なマイクロアレイ解析により、DBDEの各用量に共通した発現増加/減少遺伝子を133/80個見出したが、抗甲状腺剤暴露例と共通して発現変動した遺伝子は殆んど認めなかった。DBDE暴露例で発現変動した遺伝子として、ニューロン移動に関与するReelin、軸索形成に関与するFoxd1、Nedd4、Cldn1、ニューロン分化に関与するNotch1、Retを見出した。以上より、DBDE発達期暴露を行った際に、甲状腺機能低下を介したニューロンへの発達影響は認められなかった。
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© 2007 日本毒性学会
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