日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-88
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循環器系
Propylene glycolのイヌ心血管系に及ぼす影響
田坂 知也山田 博柴崎 久美子葛西 智恵子藤原 明鈴木 道江*田畑 肇
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抄録

【目的】難溶性の薬物の心血管系への作用を評価するにあたり,経口吸収を高める目的で薬物を溶剤に溶解して投与する場合がある.用いられる溶剤の一つとして毒性が低く溶剤としての性質に優れるpropylene glycolがある.しかしpropylene glycol自体の心血管系に及ぼす影響についてはあまり報告がみられないことから,今回テレメトリーシステムを用いてイヌの心血管系に対するpropylene glycolの作用を検討した. 【方法】あらかじめテレメトリー送信器を埋め込んだビーグル犬(雄,4例)を使用し,無麻酔・無拘束下でテレメトリーシステムを用いて血圧,心拍数および心電図(PR,QRS,QT,QTc[Matsunaga])を測定した.Propylene glycolは1および2mL/kgの投与量とし,精製水で5 mL/kgの液量に希釈して一夜絶食下に単回経口投与した.対照として精製水(5 mL/kg)を投与した. 【結果および考察】Propylene glycolの1 mL/kgでは影響が見られなかったものの,2 mL/kgではQT間隔の軽度延長が認められた(投与前に比べてQT:10.0±1.4%,QTc:8.7±1.4%).他の心電図パラメーターならびに血圧,心拍数に変化はなく,血中K,Caおよび乳酸濃度,ならびに血液pHにも明らかな影響は認められなかった.QT延長が認められたことからhERGチャンネルへの影響をrubidium efflux assayにより検討したところ0.3~100μMにおいてhERGチャンネル抑制作用は認められなかった.以上の結果より,propylene glycolは本試験条件化のイヌにおいて高用量(2 mL/kg)でQT延長を誘発することが明らかとなり,本剤を溶剤として薬物の心血管系作用を評価する際には留意する必要があることが示唆された.なお,propylene glycol のQT延長作用はhERGチャンネルに対する直接的な抑制に基づくものではなく,また,QT延長に結びつく乳酸アシドーシスや血中KおよびCa濃度の低下に起因している可能性は少ないものと推察された.

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© 2007 日本毒性学会
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