抄録
兔疫細胞治療剤(Cellular immunotherapeutics)は、ヒトの生細胞を用いて疾病を治療する細胞治療剤(Cell therapeutics)の一種で幹細胞治療(Stem cell therapeutics)と共に細胞治療の新しい疾病治療剤である。今回用いたIMMUNCELL-LCは、活性型自己リンパ球を形質の変化せずに増殖させた、自己由来の坑癌兔疫細胞治療剤である。本試験は、IMMUNCELL-LCのマウスにおける安全性を評価するために実施した。6週齢ICR雌雄マウスに、0、1.7×10^5、5×10^5 および1.5×10^6cells/headの用量で13週間、週1回静脈内投与し、一般状態観察、体重測定、摂餌量測定、眼科学的検査、尿検査、血液及び血液生化学的検査、器官重量測定、剖検時の器官の肉眼的検査、病理組織学的検査、脾臓細胞内リンパ球の分析及びナチュラルキラー(NK)活性の検査を行った。試験期間中に被験物質投与による死亡例および一般状態の変化は観察されなかった。雌雄の被験物質投与群で、体重、摂餌量、眼科学的検査、尿検査、血液学的検査、器官重量および剖検所見では被験物質投与に起因する変化はなかった。雌雄の被験物質投与群で脾臓内ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンパ球に対する活性化はなかったが、血液生化学的検査の結果でA/G ratioの減少傾向が観察された。なお、病理組織学的検査の結果で脾臓の白脾髄におけるリンパ球性の過形成が用量依存的に観察された。これらの変化は、ヒト由来の活性型T-リンパ球であるIMMUNCELL-LCの反復投与による、異種細胞に対するマウスの一般的な免疫反応であると考えられたことから、IMMUNCELL-LCの投与による毒性変化とは考えられなかった。以上の結果より、被験物質であるIMMUNCELL-LCに対する雌雄マウスを用いて13週間、週1回反復静脈投与毒性試験を実施した結果、無毒性量(NOAEL)は雌雄とも1.5×10^6cells/head以上であると考えられた。