抄録
【目的】薬剤誘発性ホスホリピドーシス (PLsis) は細胞内にリン脂質が蓄積する病態で、新薬の開発過程で問題になることがある。当社では、遺伝子解析によりPLsisのスクリーニングを実施している (遺伝子スコア法) が、コスト・スピード・手間に関しては不利な面がある。そこで本研究は、遺伝子スコア法にも使用しているHepG2細胞 (ヒト肝癌由来細胞株) と蛍光標識リン脂質を用い、良好な精度を保ちつつ安価なハイスループットin vitro評価系を構築することを目的とした。【方法】PLsis陽性物質のアミオダロンと蛍光標識リン脂質 (NBD-PE) をHepG2細胞に同時添加し、24時間培養後に細胞への蛍光リン脂質の取り込みが増大することを確認した。一方、PLsis陰性物質では、同変化は見られなかった。次に、ラット毒性試験でPLsis陽性及び陰性の社内26化合物について本系を用いて評価し、遺伝子スコア法によるPLsis予測評価の比較を行った。【結果】2化合物の偽陰性を除く24化合物についてラット毒性試験のPLsisの成績と相関が得られた。また、PLsis誘発化合物の多くはCationic Amphiphilic Drug (CAD) 化合物であることが知られているが、Non-CAD化合物についても本系で評価可能であることが確認された。更に蛍光色素法と遺伝子スコア法によるPLsis予測評価の比較では、偽陽性はなく同等の検出精度であった。【結論】今回確立した評価系は、蛍光色素法をHepG2細胞に応用した評価系で、遺伝子スコア法より安価に実施することができた。加えて、操作が簡便であるためスループットも高く、PLsis評価にすぐれた測定系であることが示唆された。