日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-146
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トキシコパノミクス
モデル催奇形性物質を用いた発生トキシコゲノミクス(Percellome手法)解析
*北嶋  聡相崎 健一五十嵐 勝秀中津 則之菅野 純
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抄録

発生毒性学は、ダイナミックな遺伝子発現調節の分子機構を基礎に、より正確なものに補強されることが分子発生研究から示されている。分子毒性研究の応用として、我々は、化学物質トキシコゲノミクス・プロジェクト(Percellome project)により、遺伝子発現変動に立脚した迅速・精細なリスク評価系の開発研究を推進している。この手法を発生毒性へ適用するために、これまでに1)モデル遺伝子改変マウス胚を用いた本解析手法の実用性の検討、2)無処置野生型胚・全胚(胎生6.5-9.5日)を用いた遺伝子発現の経時的発現解析及びデータベース構築について検討してきた。今回は3)モデル催奇形性物質投与による本手法の具体的な適用と解析について報告する。モデル催奇形性物質として、バイケイソウ属植物由来アルカロイドでShhシグナル阻害剤であるサイクロパミンを選択した。この物質は、家畜等で単眼症を引き起こすが、ラット、マウスでは低感受性であることが報告されている。遺伝子発現データベースと用量設定実験を考慮し、サイクロパミンを妊娠7.5日の妊娠マウス(C57BL/6) に単回経口投与し、投与2、8、24時間後の胎児RNAサンプル(1腹分1サンプルとした)につき、マイクロアレイ[Affymetrix GeneChip Mouse Genome 430 2.0]を用いて遺伝子発現変動を解析した。その結果、サイクロパミンの標的分子(Smo)を含むShhシグナル関連遺伝子は、溶媒投与群のものと比較し有意な変化は認められず、コレステロール生合成に関わる遺伝子群に有意な発現変動が見いだされた。この結果は、分子標的物質が影響する想定外のシグナルカスケードを見いだせたことを示唆しており、化学物質の安全性評価上、意義深いものと考えられた。今後は、さらに多くの催奇形性化学物質を検討し、より一般化させていく予定である。

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© 2007 日本毒性学会
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