抄録
【目的】ES細胞から形成される胚様体(Embryoid body:EBと略す)は胎児の卵筒胚(egg cylinder)に近似しており、初期胚への影響を調べるために利用されている。我々は、EBと胎児の分化を遺伝子レベルで比較することを目的に、細胞1個当たりのmRNAのコピー数で表すことが出来るPercellome手法を用いた定量的マイクロアレイ法を用いて解析した結果を第33回日本トキシコロジー学会学術年会にて報告した。今回、その再現性の確認ならびに遺伝子発現データベースの精度を上げるため、サンプル数を増やして同様に解析し、さらに、マウス胎児での遺伝子発現との比較を行った。
【方法】マウスES細胞(TT2)を LIFを除いたES培地で、最初の2日間はhanging drop法で、次の5日間は浮遊培養法で、計7日間培養した。ES(0日)と分化培養開始1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7日後と0.5日ごとにEBを採取してプールし、サンプルとした。 RNAはRNAeasy(キアゲン社)で抽出、蛍光ラベル後、40000以上の遺伝子解析が可能なアフィメトリクス社のGeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを用いて遺伝子発現解析を行った。
【結果及び考察】中胚葉のマーカーとして知られているbrachyuryはEBの分化3日後をピークに一過性に増加し、中胚葉由来の心筋のマーカーであるcardiac actinは分化5日目より増加した。胎児との比較により、これらの遺伝子は、胎児では胎齢7から8日に相当することが確認された。また、種々の核内受容体の発現パターンを明らかにし、今後のEBを用いた発生毒性の解析の基盤となる情報が得られた。