日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-159
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農薬・金属・工業化学品・自然毒ほか
ミトコンドリア内ピルビン酸レベルに及ぼすメチル水銀の影響
*李 辰竜黄 基旭永沼 章
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抄録
【目的】我々は酵母およびヒト由来培養細胞において、無毒性濃度のピルビン酸の培地中への添加がメチル水銀毒性を顕著に増強させることを見出し、この現象にピルビン酸のアセチルCoAへの代謝が関与していることを明らかにしている。そこで今回は、メチル水銀が酵母のミトコンドリア中のピルビン酸レベルに及ぼす影響について検討した。 【結果および考察】まず、メチル水銀が酵母中のピルビン酸の細胞内分布に及ぼす影響を検討したところ、未処理細胞に比べて、細胞質中のピルビン酸レベルには減少傾向が認められたのに対し、ミトコンドリア中のピルビン酸レベルはメチル水銀濃度依存的に有意な増加を示した。また、ミトコンドリア中へのピルビン酸のトランスポーターであるYil006wを欠損させた酵母はメチル水銀耐性を示すが、本欠損酵母では正常酵母で認められたメチル水銀処理によるピルビン酸レベルの増加は認められなかった。一方、無毒性濃度のピルビン酸の培地中への添加により細胞中ピルビン酸レベルは有意な増加を示したが、ミトコンドリア中のピルビン酸レベルは上昇傾向を示したものの有意な変動は認められなかった。また、メチル水銀がミトコンドリア中へのピルビン酸の取り込みに及ぼす影響を検討したところ、取り込みの増加が認められた。以上のことから、酵母は、通常は、ミトコンドリア中のピルビン酸レベルを一定に維持しているが、メチル水銀は何らかの機構によってミトコンドリア中へのピルビン酸の取り込みを促進させ、それによって細胞毒性を発揮している可能性が考えられる。
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© 2007 日本毒性学会
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