日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-158
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農薬・金属・工業化学品・自然毒ほか
ヒト培養細胞を用いたメチル水銀の生体内変換とそのメカニズムの検討
*永野 匡昭安武 章三浦 郷子
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キーワード: メチル水銀, 生体内変換
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抄録
【目的】体内に取り込まれたメチル水銀(MeHg)は時間の経過とともに無機水銀に変換され、その大部分は糞便から無機水銀として排泄される。したがって、この生体内変換はMeHgの排泄促進の一助を担っているように考えられるが、その意義については明らかとなっていない。そこで、我々はMeHgの生体内変換の意義を解明することを目的として、今回ヒト組織由来の細胞株を用いてMeHgの脱メチル化について検討を行った。 【方法】研究対象として、由来組織の異なるヒト由来正常肝細胞(C. Liver)、神経芽細胞腫(SK-N-SH)及びアストロサイトーマ(U-373MG)を用いてMeHgの取り込み及び無機水銀の生成量について経時的に検討した。C. Liver及びU-373MGについては、MeHg濃度1、2または5 μMで検討した。SK-N-SHについてはMeHg濃度1 μMで行った。水銀の測定は酸化燃焼-金アマルガム法にて行った。無機水銀の試料はYasutakeとHirayamaの方法に若干の改良を加えて調製した。 【結果及び考察】MeHgの細胞への取り込みはいずれの細胞においても曝露24時間後にはプラトーに達し、細胞内無機水銀量はその後も時間とともに増加した。MeHg濃度1 μM曝露時における細胞への取り込み量はSK-N-SHが最も多かったが、MeHgの生体内変換能(細胞内無機水銀濃度/総水銀濃度)はC. Liverにおいて最も高かった。以上の結果から、MeHgの生体内変換能は由来組織によって異なることを確認し、3つの細胞株のうち肝臓由来のC. Liverが最も高いことが明らかとなった。一方、MeHgの生体内変換のメカニズムについてはラットの肝臓においてミトコンドリアで生成したスーパーオキシドが関与することが報告されていることから、現在同じ手法により検討中である。
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© 2007 日本毒性学会
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