日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-35
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6.新規物質(ナノマテリアル等)
ラットにおける多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の陰嚢腔内投与による中皮腫の誘発
*坂本 義光福森 信隆上原 眞一広瀬 明彦西村 哲治前川 昭彦今井 清小縣 昭夫中江 大
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抄録
【目的】MWCNTは,繊維状に凝集したアスベスト類似の形状から,アスベスト同様の毒性を示す可能性が危惧されている.本研究は,MWCNTの発がんハザードについて,ラット陰嚢腔(腹腔)内投与法を用いて検索した.【方法】実験は,MWCNT及びクロシドライト(Cro)の2% CMC懸濁液(0.5又は1.0 mg/ml)をFischer 344系雄性ラット(12週齢,体重250-300 g)の陰嚢腔内に単回投与した.実験1は,発がん性検出を目的に,体重kg当たりMWCNT 1.0 mg(7匹)又はCro 2.0 mg(10匹)を投与した.予定実験期間は,52週間とした.実験2は,腫瘍発現時期探索を目的に,7匹にMWCNT 2.0 mg/kg体重を投与した.予定実験期間は,30週間を目処に,死亡又は瀕死例の発生により調整するものとした.【結果】実験1のMWCNT群では,37-40週に死亡・瀕死6例を解剖し,52週に残る1匹を屠殺剖検した.肉眼的には,血性腹水を認め,大小の白色結節が腹膜に播種状に分布し,一部胸腔内にも観察された.組織学的には,中皮細胞が全般的に肥大・増生し,随所で大小の結節性ないし乳頭状を示す中皮腫が観察された.中皮腫は,小型の場合,概ね中皮様細胞で構成されて一部肉腫様を示し,大型の場合,表層部の中皮様細胞増殖・深部の紡錘状細胞の肉腫様増殖・それらの移行像より成り,横隔膜や消化管の筋層間へ浸潤していた.Cro群では,52週に全例生存し,腫瘍発生がなかった.実験2では,26週に血性腹水を伴う腹腔内中皮腫による瀕死1例が発生したため,27週に3匹,30週に3匹を屠殺解剖した.30週屠殺1例は血性腹水を伴う腹腔内中皮腫が発生し,他の5例では腹膜中皮細胞の全般的な肥大・増生と共に中皮過形成や早期中皮腫を認めた.【結論】以上より,MWCNTは,発がんハザードを持ち,雄性ラットへの陰嚢腔(腹腔)内単回投与により,26週間までに発がん過程が開始し,52週間以内に高頻度発生に至る中皮腫を誘発するものと判明した.
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© 2008 日本毒性学会
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