日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-37
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6.新規物質(ナノマテリアル等)
様々なサイズのTiO2ナノ粒子を用いた肺毒性の比較試験
*納屋  聖人小林 憲弘遠藤 茂寿山本 和弘中西 準子
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抄録
 工業ナノ材料は,既存の材料にはない様々な優れた特性を持つことから,幅広い用途への応用が期待されている一方で,従来の知見からは予測できない毒性を持つのではないかという懸念も一部で持たれている。特に,幾つかの研究においては,TiO2等の低毒性の粒子であっても,そのサイズが小さくなるほど,大きな粒子と比較して吸入暴露による肺毒性が大きくなることが報告されている。しかし,このような報告の多くは,試験に用いたナノ粒子のキャラクタリゼーションに不十分な点が多いという問題点があるため,粒子の特性をより正確に把握した試料を用いた毒性試験によって,粒子サイズと生体影響との関係について再評価することが必要と考えられる。本研究では,肺毒性の比較評価を行うために,様々な一次粒径および二次粒径のTiO2粒子を作製し,粒子の特性を明らかにした上で,2種類のラット気管内投与試験を行った。最初の試験では,可能な限り分散させた一次粒径の異なる3種類の粒子(7,20,200 nm)を作製し,いずれも5 mg/kgの用量でラットに単回投与したところ,気管支肺胞洗浄液中のバイオマーカーおよび肺の病理組織学的検査で確認した肺への炎症反応は,投与後1週間まではサイズの小さい粒子の方が大きかった。ただし,全ての投与群において,投与後1ヶ月時点での炎症反応はほぼ同様に回復しており,ナノサイズの粒子であっても一過性の炎症反応しか引き起こさなかった。第2の試験では,一次粒径7 nmの粒子を用いて,二次粒径の異なる3種類の粒子(18,65,300 nm)を作製し,いずれも5 mg/kgの用量でラットに単回投与したところ,粒子サイズと肺の炎症反応との間に明確な関係は認められなかった。また,TiO2以外の粒子タイプについても当てはまるのかどうかを確認するために,結晶性シリカについて同様の比較を行う。
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© 2008 日本毒性学会
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